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株式会社うるる 代表取締役 星 知也

~企業と働き方を変え、社会を変える~ クラウドソーシングからCGSへ

“あたり前の働き方”となりつつある在宅ワーク。国土交通省の調査によると2013年の在宅ワーカー人口は700万人超に達した。多様な関連市場も生まれている。今回は、クラウドソーシングとCGSという在宅ワークを支える2つの「サービスのカタチ」を取材。注目を集める新産業のビジネスモデルについて、その中長期的な成長性を検証した。

※下記はIR通信vol.3(2015年8月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

クラウドソーシングの長所を伸ばし、課題を解決するCGS

 「地方に居住しながら東京の企業の仕事をする」「介護や育児のすきま時間を使って仕事をする」。こうした〝距離と時間の壁〟にとらわれない働き方ができる在宅ワークが急増したきっかけは2011年の東日本大震災。被災地での需要が高まり、導入企業が増えたことだ。企業側には、オフィスや通勤代などの固定費がかからない低コストの労働力を確保できるメリットがある
 パソコンなど情報通信機器の発達や、仕事をアウトソースしたい企業と仕事を受注したい人をオンライン上でマッチングするクラウドソーシングが登場したことも、在宅ワークの普及をあと押しした。
 矢野経済研究所の推測では、クラウドソーシングの市場規模(業務委託企業による仕事依頼金額)は、2011年度は約44億円だったが2014年度は約400億円以上と10倍近く成長。2018年度には1820億円に拡大すると見られている。政府も、さまざまな事情で通勤できない人に就労機会を提供できる在宅ワークの普及を「成長戦略」のひとつに掲げている。
 しかし、そこには「落とし穴」があった―。

働き手を疲弊させかねない、クラウドソーシングの仕組み

 時給60円。今年初め、大手経済紙の連載記事が在宅ワーク関係者の間で話題になった。そこには、在宅ワークでWeb制作を請け負った主婦が、あまりの報酬の低さに戸惑う姿が報じられていた。
 働き手を疲弊させかねない現象が起きるのは「クラウドソーシングの仕組みが、1社の発注企業に対して多数のワーカーが希望受注金額を提示し、選別される〝買い手市場〟であるため」との指摘が少なくない。
 しかし、価格設定に市場原理が働き、仕事の値段を適正化することに一役買っているとの解釈も成立する。一部では、高いスキルをもつワーカーが年収1000万円以上を稼ぎ出す事例もある。

CGSの設計思想と収益性

 それでも、受注希望金額を競り合うクラウドソーシングの場合、いつ仕事があり、どのくらい報酬があるのかの見通しが立てづらいため、働き方のスタンダードにはなりにくい。
 しかし、こうしたマイナス面を払しょく。利用企業にもより多くのメリットを提供する「クラウドソーシングの未来形」が徐々に勢力を拡大している。CGS(Crowd Generated Service)がそれだ。つまり、クラウドソーシングから生成された新たな価値を提供するサービスである。
 大きな相違点は、そもそものプラットフォームの設計思想。クラウドソーシングが、スポットの仕事について企業と個人をマッチングするのに対し、CGSではクラウドソーシングということを連想させずに高付加価値のサービスを提供し、安定的な収益を上げ、そのプロダクトはじつは在宅ワーカーがつくっているという構造。そのため、ワーカーは収入の安定化を図りやすい。 
 収益構造も異なる。ワーカーが受注した金額の10~20%にあたるサービス利用料がクラウドソーシングのサービス提供会社の収益源。ワーカーの受注金額の値崩れを招きかねない「1対多」の買い手市場という仕組みそのものが収益性のボトルネックとなりえる。
 一方CGSでは、そのサービスを使いたい利用者が対価を支払うため、提供会社が付加価値のあるサービスを創出し続けていくことで、収益力を高めることができる。
 次ページから、CGSの草分け的存在で「在宅ワークのスタンダード化」を標榜。IPOも近いと噂される、株式会社うるるを取材。CGSの現状と未来を追った。

CGSの〝パイオニア〟で、複数のサービスを提供する〝うるる〟。「在宅ワークのスタンダード化」を標榜する同社代表の星氏に、CGSの仕組みや今後のビジョンなどを聞いた。

クラウドソーシングというハードに乗るソフトウェア

―クラウドソーシングとCGSの違いを教えてください。

 ネットを通じてワーカーに仕事を依頼するという点は共通していますが、ふたつの間には大きな違いがあります。それは、クラウドソーシングがハードウェアだとすれば、CGSはそのうえに乗るソフトウェアだ、ということです。

―そこをもう少し詳しく解説してください。

「ネットを通じて仕事をしたい」と考えているワーカーと、仕事をアウトソースしたい企業や個人などの利用者をマッチングするのがクラウドソーシング。それに対してCGSは、こうしたクラウドソーシングのインフラを基盤に生成(Generate)された、付加価値の高いサービスを提供します。
 具体的には、ワーカーへの仕事依頼はうるるがバックグラウンドで依頼。クラウドソーシングと異なり、CGSの提供会社は品質管理にも責任を負い、カタチを変えて利用者に価値を提供します。利用者は背景にあるクラウドソーシングの存在を意識することはありません。

利用者とワーカーの、相互に大きなメリット

―クラウドソーシングは日本で普及し始めてまだ数年ですが、早くもその進化形としてCGSが登場したのですね。

 CGSがクラウドソーシング後に登場した、というのは正確ではありません。なぜなら、当社は私が就任した当時、2003年からCGSの確立を試行してきたからです。
 当社が創業事業として日本初の老舗クラウドソーシングサービスで現在は約10万名以上の会員が登録するSHUFTI(シュフティ)を立ち上げたのもそのため。当社はクラウドソーシング事業そのもので大きな利益を得ようとは考えていません。CGSの普及を通じ、企業理念の「在宅ワークのスタンダード化」を実現。それによってワーカーや利用者と一緒に継続成長することを志しています。当社にとってSHUFTIは、あくまでもCGSサービスを生成するための基盤なのです。

―CGSが在宅ワークのスタンダードとなりえる理由を聞かせてください。

 ワーカーに、より高い、安定した報酬を獲得する機会を提供できるからです。
 一般のクラウドソーシングの場合、ワーカー間で仕事を取り合うため、希望金額を安く提示しないと仕事が取りにくい構造があります。しかも仕事はスポット契約のケースがほとんど。報酬の安定化、仕事の安定化は図りにくいため、クラウドソーシングは在宅ワークのスタンダードにはなりにくいでしょう。
 一方CGSでは、うるるが報酬金額などの条件をあらかじめ提示したうえでワーカーを募集。お客さまには、低コストで付加価値の高いサービスを継続して提供します。固定費のかかららない不特定多数のワーカーのアウトプットを通じ、提供会社がサービスを生成する仕組みがあるので、CGSはワーカーにより高い報酬や継続的な仕事、安全な仕事を得られる機会を提供できるのです。

SHUFTIのパワーで生まれた高付加価値事業

―CGSの事例を教えてください。

 当社が展開している『入札情報速報サービス』(以下、NJSS)をご紹介しましょう。
 NJSSは、中央省庁や地方自治体などが発注する公共事業の入札・落札情報を集約した公共事業情報サービス。常時2~3万件以上の入札案件を掲載している国内最大級の公共事業データベースです。これまで、大企業から中小・ベンチャー企業まで、6万社以上から利用していだきました。
 インターネット上に散らばっている情報で、一つひとつの価値は低いけれど大量に集まると高い価値が生成される情報があります。そのひとつが、年間20兆円規模に達する公共事業の入札・落札情報。じつは入札情報の発信方法は公共事業の発注主体によってマチマチな部分があります。そのため、当社が行ったテストでは、従来のロボット検索システムで収集できる入札情報は、実数の半分以下程度という結果がでました。

―どうすれば、大量収集できるのですか。

 人間の判断力を結集すれば、大量に情報収集できます。
 通常、ネット上に散らばる情報を集める際は、クローラーなどのロボット検索が使われます。しかし、ロボット検索は一定の法則性があるルーティンワークをこなす場合には高効率な半面、ルールが明確ではなく、慣れやカンが問われる作業には不向き。そこは人のチカラが圧倒的に優れています。なおかつ、低賃金の海外オフショアでは、外国人ワーカーは日本語を理解できない。ですから、マチマチな方法で発信される入札情報は、日本人による人力でなければ大量に収集できませんし、高い付加価値を生成することも不可能なのです。
 当社は、基本的にSHUFTIを通じて入札情報を収集しています。NJSSは、人力による(注1)キュレーション事業という、まったく新しい概念のサービス。SHUFTIという、高付加価値のCGSサービスを生成できる基盤があるからこそ、実現可能な事業です。

(注1)キュレーション:情報を収集・分類し、つなぎ合わせて新しい価値を持たせたること

BPOが基盤だから、無限にCGSを創出できる

―御社のCGS戦略を聞かせてください。

 現在、NJSSのほか、手書きに対応したタブレットフォームシステムの『KAMIMAGE(カミメージ)』、幼稚園・保育園向け写真販売システムの『園ナビフォト』などを展開しています。今後は年間3本ずつ新規のCGS事業をリリースする予定です。

―なぜ御社は、さまざまなCGSサービスを立ち上げることができるのですか。

 2つの理由があります。まず、当社が設立当初から(注2)BPOサービスを展開していること。次に、そうしたアウトソースニーズをCGSサービスに変換した場合、ビジネスとして成立するかどうかを検証できるSHUFTIというリソースをもっていることです。
 BPOサービスの現場では、利用企業から「こういうことはできないか」「こんなBPOサービスがあればうれしい」といった声が日々寄せられます。当社は今までに3500社以上のクライアント、案件数で15000件以上を請け負った実績があり、それゆえに「どういったアウトソースニーズが高まっているのか」を現在進行形で把握できるのです。
 そうした企業ニーズに基づき、新規のCGS事業候補を月間10本程度企画。SHUFTIを利用してプロトタイプを練り上げ、収益性と成長性の観点から絞り込んだ選りすぐりだけをサービスとしてリリースしているのです。NJSSをはじめ、KAMIMAGEや園ナビフォトも、こうしたプロセスを経て立ち上げました。

(注2)BPO: Business Process Outsourcingnoの略称。企業運営上の業務やビジネスプロセスを専門企業に外部委託すること。管理部門の業務を中心に外部に委託するケースが多い。

社会を幸せにする、在宅ワークのスタンダード

―今後のビジョンを聞かせてください。

 当社は「在宅ワークのスタンダード化」を創業理念に掲げ設立しました。その想いは今もぶれることはありません。さまざまな事情を抱えて働きに出られない人々でも、しっかりした報酬を得られる世界の実現に貢献したいですね
 クラウドソーシングが世の中で認知されつつありますが、ほとんどのクラウドソーシングサービスは企業目線で「既存外注よりも安い」ことをメリットにうたっています。それはワーカー目線ではありません。当社は質の高いプロダクトを創出していくため、ワーカーにキチンとした報酬を払い、多くの人に成長機会と良質な仕事ができる機会を提供していきたいと考えています。ワーカー目線のクラウドソーシングであるSHUFTIも、そのために日本で初めて作りました。
 インフラとして、単に労働力を安価に提供するのではなく、カタチを変えた高付加価値サービスの提供がCGSのミッション。その結果、ワーカーはダンピングされない高単価でかつ安定した収入を得られ、利用者は目的に応じた高付加価値サービスを活用でき、事業としても収益性の高いビジネスに成長します。利用者、ワーカー、提供会社がWIN×WIN×WINの関係になれるCGSは、間違いなく日本のGDPを押しあげるのに一役買うでしょう。

―『IR通信』の読者へのメッセージを聞かせてください。

 CGSは、労働力不足、働き方の多様化、都市と地方の経済格差など、数多くの社会問題を解決する優れたシステムだと自負しています。パイオニアである当社には先頭に立ってその啓蒙と普及に取り組み、CGSを在宅ワークのスタンダートとして確立させる使命があります。ですから当社は、SHUFTIだけではなく、買い物代行などリアルで動ける人をバックボーンにしたサービス、海外に住む日本人や外国人のワーカーを糾合した高付加価値サービスなど、さまざまなCGS事業を展開したいと思っています。
 当社は創業以来、BPOという地に足がついた事業を約10年間コツコツやり続け、その利益を利用してNJSSなどのCGS事業を軌道に乗せてきました。企業ニーズを吸いあげるBPOサービスという基盤があるので、新規事業のタネは尽きません。BPOでCGSのタネを創り、SHUFTIでそれを育てるというオンリーワンの仕組みが当社にはあります。また、将来はIPOなどで調達した資金でCGSをより増やすのはもちろん、他社がもっている〝CGS事業のタネ〟を買収し、成長スピードを加速させることも検討しています。人力を利用した、つまりCGS化させることで効率性や価値を飛躍的に高められる既存事業・サービスは、数限りなくあります。
「会社はホーム、社員はファミリー」という言葉をモットーに、仲間を大切にしてきたことも継続成長の原動力。経営陣をはじめ当社には成長意欲が高いメンバーしかいません。もちろん、ワーカーも大切な仲間。CGSで生産性の向上に寄与し、みんなが幸せになる社会の実現に貢献したいですね。

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