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上場企業インタビュー

株式会社エボラブルアジア 代表取締役社長 吉村 英毅

急伸する国内航空券市場で圧倒的No.1ブランドを確立

もっとも成功したネットビジネスのひとつが旅行事業。ホテルや航空券の予約を従来のリアル店舗ではなくWeb 上で完結させている読者も多いだろう。ITが生んだ新鉱脈「オンライン旅行事業」の国内航空券市場で急成長しているエボラブルアジアの代表、吉村氏に「次の一手」などを聞いた。

※下記はIR通信vol.5(2016年11月9日発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

国内全航空キャリアと取引するオンリーワン企業

―2016年度連結決算において、取扱高が前期比134.5%、売上高は同145.2%、営業利益は同197.6%と業績好調です。急成長の理由を教えてください。

 大きな要因は外部環境の変化です。

 当社の主力事業は国内線のオンライン販売。「楽天トラベル」や「じゃらん」は国内宿泊、エクスペディアが海外ホテル、エイチ・アイ・エスが海外航空券を主力としているのに対し、当社のメインマーケットは完全に国内航空券です。以前の国内線業界は典型的な寡占市場でしたが、規制緩和の進行で新規参入航空会社が誕生し、スカイマークがシェアを伸ばしたのを初め、2012年からは国内主要航空路線にもLCC(格安航空会社)が参入。主要14社がひしめく競争市場に変貌し、各社から多様な割安航空券が発売されるようになりました。すると「複数社の国内航空料金を比較検索したい」とのニーズが利用者の間で年々高まり、私たちに追い風が吹いたのです。

―なぜ比較検索ニーズが高まると、御社の業績が伸びるのですか。

 当社はこの市場の創成期から航空会社と取引を重ね、地道に信頼関係を築いてきました。そしてOTA(オンライン旅行業)で唯一、国内全キャリアの航空券を横断比較・予約できるサイトを運営するまでに成長。当社が運営する「空旅.com」「e航空券.com」「AirsGate」といった国内航空券比較検索・予約サイトはOTA市場のなかで、利用者からの認知度が高い「ブランド」として定着。そのため、比較検索ニーズがより高まり、市場が成長すると、当社の取扱高や売上高も増えていく構図になっているのです。

 また、国内線の利用者はビジネスパーソンが大半です。彼らにとって、以前のLCCはほとんど比較検討の対象になりませんでした。就航路線や本数が少ないほか、以前は発着時間も不正確だったからです。しかし最近はこうした問題が解決され、ビジネス用途としても非常に使い勝手が向上。個人のビジネスパーソンの利用者が増加しているほか、法人契約も伸びています。そのため、この1年間で見ても当社の業績が急成長しているのです。

取扱高1000億円に向けた成長戦略を推進

―OTA市場では海外航空券に強いエイチ・アイ・エス、宿泊予約を主体とするエクスペディア、楽天やリクルートなどの大手企業が展開しています。御社が主戦場としている国内航空券のマーケットに大手企業が参入する可能性はありませんか。

 数年内のスパンで考えると、参入する可能性は低いでしょう。その理由はOTA市場全体ですみ分けができており、各分野の〝ガリバー〞がそれぞれの本業に注力しているからです。2020年の東京五輪に向けてインバウンドとアウトバウンドの観光需要はさらに伸びることが予想され、大手企業は自社の本業拡大に取り組むことで精いっぱいの状況。つまり、国内航空券の隣接市場でビジネス展開している大手企業はいまのところ国内航空券市場への参入意欲は低いし、その余裕もありません。仕入れのハードルが高いことも参入を難しくしている理由です。航空会社は現在の直販比率をできる限り維持したいので、大手企業でもすぐに取引を始めるのは難しいでしょう。

 しかし、先を考えると、いずれ大手企業も国内航空券市場に参入するかもしれません。当社はそれまでにさらにブランド力を強化。「国内線予約ならエボラブルアジア」という圧倒的No.1ブランドをつくり、大手企業が参入しても負けない、強固な基盤を築く戦略です。

―OTA市場の今後の成長性について聞かせてください。

 国内航空券のマーケットはおよそ1.5兆円にのぼります。当社はオンライン販売代理店としては最大手ですが、いまだ2%程度のシェア。比較検索ニーズが高まってからの歴史が浅いため、誰もが知る有名ブランドが存在しません。これから私たちのブランド力を高めれば、さらに業績は伸びるはずです。当面の目標は7%弱の市場シェアに相当する取扱高1000億円。国内宿泊予約の「楽天トラベル」「じゃらん」の市場シェアがどちらも約20%という現状から考えると、当社が国内線市場で7%以上のシェアを占めるのは十分に達成可能でしょう。

インバウンド市場でも「勝ち組」を目指す

―〝成長の伸びしろ〞は豊富なのですね。取扱高1000億円に向けて、どのような戦略を描いていますか。

 シェアを伸ばすための施策は2点に集約されます。ひとつは、どこよりも「便利でお得なサービス」をつくること。もうひとつは、それを伝えるためのマーケティングです。

 この市場は商材そのものを差別化することができません。どのWebサイトで予約しても、航空券の内容・価格は同じです。そこで差別化できるのは、利便性や信頼性。UI・UXを磨いてユーザー体験を向上させたり、モバイル端末などでも使いやすくすることです。そのためのIT技術の開発は、当社のベトナムのオフショア開発センターで行っており、内製化しています。ちなみにオフショア開発センターでは500名以上の技術者を抱えています。

―ITオフショア開発事業が自社サイトの利便性向上にも寄与しているわけですね。新サービスやマーケティングの取り組みについても教えてください。

 便利でお得な新サービスについては、詳細をお話しできる段階にはありませんが、近々の発表に向けて着々と準備を進めているところです。

 マーケティングについては、現在はWebマーケティングに専念しており、一定の効果を上げています。今後は適切なタイミングでマスマーケティングにも投資する計画です。

―政府は2020年の東京五輪に向けて、訪日外国人旅行者数4000万人を目標としています。訪日旅行事業の展開はいかがですか。

 今後もインバウンド市場が拡大するのはほぼ間違いありませんが、問題は収益化の方法です。インバウンド事業を展開している企業は数多くありますが、実際に利益をあげている会社は少ないのが現状。〝爆買いブーム〞も一服です。

 その一方、すでに当社は訪日旅行サイトへのコンテンツ提供(7ヵ国語に対応)で収益を上げており、今後は他の収益ポイントを増やしていく計画です。具体的な取り組みとして、宿泊施設不足に悩む訪日旅行客に対して、キャンピングカーのレンタルサービスを提供する目的で米エルモンテの日本総代理店を今年7月に子会社化したほか、複数社と業務提携を結び、民泊事業を進めていきます。規制緩和の動きをにらみながら、インバウンドビジネスでも「勝ち組」を目指します。

冷静さとバランス感覚から生み出される“未来戦略”に注目

 質問によどみなく理路整然と答える。期待先行のインバウンド市場に対しても吉村氏は冷静だ。利益の約8割を占めるコアビジネスであるオンライン旅行事業で、まずは国内線市場で圧倒的地位を築くための施策と投資に注力していくという。

 そのうえで今期より訪日旅行事業を部署化。成長分野にタネをまき続ける姿勢も明確だ。たとえば買収したキャンピングカー事業は車両の再販価格が高いため事業リスクは限定的。こうしたバランス感覚のなかから打ち出される「次の一手」が注目される。

吉村 英毅(よしむら ひでき)プロフィール

1982年、大阪府生まれ。東京大学経済学部経営学科で経営管理と金融工学を専攻。大学在学中の2003年に株式会社Valcom(2009年に株式会社旅キャピタルに吸収合併)を創業。2007年に株式会社旅キャピタルを創業し、代表取締役社長に就任。2013年に株式会社エボラブルアジアへ社名変更。2016年3月、東証マザーズに上場。

企業情報

設立 2007年5月 
資本金 10億1,980.5万円 
上場市場名 東証マザーズ(6191)
決算期 9月
事業内容 オンライン旅行事業、ITオフショア開発事業、訪日旅行事業
URL http://www.evolableasia.com/

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