上場企業と投資家をつなぐ
成長企業の経営戦略が読める情報誌
上場企業インタビュー

深層レポート

投資家と新興企業が末永く幸福な関係を続けるためには

17年前、あるベンチャー企業がIPOを果たした。初値は200万円。このとき1株買って、現在まで保有し続けたとすると、3億6,000万円を超える資産になっている─。短期投資の対象になりがちなベンチャー株だが、長期保有によって大きな利益を得ることも可能なのだ。そこで今回は、新興市場に詳しい証券アナリストの協力を得て、ベンチャー企業の株が長期的な投資の対象になるための条件を探った。

※下記はIR通信vol.1(2014年8月22日発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

アベノミクス相場は一服もIPO件数の増加は続く

 2014年上半期の国内IPO件数は26件。リーマン・ショックによる低迷期を底として5年連続で増加を続けている(図A参照)。アベノミクスによる昨年の株価上昇を追い風に、IPOを計画しはじめたり、既存の計画のスケジュールを前倒しした企業が今後も続々と上場するとみられ、この傾向はまだ続くという見方が強い。
 しかし、昨年と比べるとIPO株の相場には勢いがみられない。2013年上半期は初値が公募価格を下回ったケースはゼロだったが、2014年同期は7件ある。6月に東証マザーズ上場を果たしたアドテク・ベンチャーのフリークアウトが公募価格の3・5倍、7000円の初値がついた例はあるが、全体としての初値形成は昨年より低い水準だ(図B参照)。アベノミクス効果による株式相場全体の押し上げが一服したことがその背景にある。
 新興市場にはこれからも続々と新たな企業が上場する。一方で、IPO直後の短期的な値上がりはあまり期待できないという状況だ。では投資家は、新興市場をにぎわすベンチャー企業の株と、どのように向きあうべきだろうか。その答えのひとつが、10年程度の長期保有の対象にすることだ。

株式分割が重なれば資産価値はアップする

「ニッチ分野で高い競争力をもつ企業。独創性の強いビジネスモデルを確立した企業。ユニークな製品開発力とマーケティング力をもつスタートアップ企業」。野村證券エクイティ・リサーチ部の中小型株チームヘッドを務める繁村京一郎氏は、株を長期保有する対象となりえる企業についてこのように指摘する。
 これをそのまま、「成功するベンチャー企業の条件」といっても、あまり違和感がないだろう。つまり、優良ベンチャー企業の株は長期的なスパンで投資する対象だと、専門家はみているのだ。
 しかし、現実の市場ではそうなっていない。大半の投資家はベンチャー株を短期的なスパンで売買している。大企業に比べて多くのインカムゲインはのぞめず、倒産リスクも高い。だから長期保有するメリットは少ないとみられている。一方で、流通している株数が少ないので短期間に大きく株価が変動する。そのぶん、短いスパンの売買で利益をあげられるチャンスが大きいからだ。
 また、成長志向の強いベンチャー企業は、その成長期待値が株価にすでにおりこまれているケースがほとんど。その意味で割安とはいえない。このことも、投資家にベンチャー株の長期保有をためらわせる一因になっている。
 だが、これらの不安要因を解消する施策を打つベンチャー企業もある。株式分割だ。株を保有している投資家にとっては、なにもしなくても手もちの株数が増えていく。これにより多くのインカムゲインを手に入れられる。また、購入時に割高な株だったとしても、分割による株数増加のメリットによって資産価値の上昇幅は大きくなるのだ。

17年間保有し続ければ181倍になるケースも

 ポータルサイトやネットオークションの運営で有名なベンチャー、ヤフーのケースで試算してみよう。同社が1997年11月にIPOを果たしたときの初値は200万円。成長への期待から高値がついて話題となった。この時点では割高な銘柄だったという評価も可能だ。それでも1株を初値で購入したとしよう。そして、ずっと保有し続けていると仮定する。
 ヤフーはIPOから1年半後の1999年5月に1:2の株式分割を実施。それから2013年10月の1:100の株式分割まで、14回の株式分割を重ねている。IPOのときに購入した1株が、いまは81万9200株に増えている計算になる。これに2014年8月1日の終値をかければ、資産価値は3億6200万円超。購入時の181倍だ。

( )プロフィール

※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。

IR通信

IR通信

IR通信は上場企業と投資家をつなぐ「成長企業の経営戦略が読める情報誌」です。

定価:1,066円(税込)

IR通信への掲載・取材希望の方

IR通信編集部では、"成長企業の経営戦略を読む"というテーマのもと紙面に登場いただける経営者の方を募集しております。

pagetop